皆さん、Unclaimed Propertyという言葉をご存知ですか?日本語では、未請求資産と言います。さっぱり解りませんよね。Unclaimed Propertyとは、米国にある制度で持ち主の所在が不明になるなど何らかの事情でお金を返金する手段を失った企業や団体が、返還できない金融資産を州政府へ一時的に預け保管しておく制度です。で、元の持ち主は、所定の手続きを行うことによって州政府から返金を受けることができます。企業や団体は、面倒くさい手続きに巻き込まれることを回避できます。
私がUnclaimed Propertyの手続きをした理由
Unclaimed Propertyの対象の一つに、長い間入出金のない銀行の休眠口座預金があります。私は10年以上前にアメリカのカリフォルニアにあるグループ会社に出向してベイエリアで働いていたことがあります。給料の振り込みや生活のために銀行口座は必須なので、現地の銀行に口座を作っていました。離任後もしばらくは税金やサービスの支払いなので銀行口座が必要になるので、そのまま残しておきました。その際に口を酸っぱく言われたのが、少額でも良いので年に何回か取引をして、口座を凍結されないようにすることです。
州によってはルールが違うようですが、カリフォルニア州では3年以上取引がなかった口座は、州政府に移管されます。私も口座が凍結される事はしっていたのですが、口座にログインするためのID・パスワードの組み合わせを何度か間違えてしまってロックがかかってしまいました。ロック解除の依頼はかけたのですが、自分の苗字が変わっていたために例外的な対応が必要で書類が沢山必要でした。当時は仕事も忙しく、そのうちやれば良いやと思っていたのですが、気がついたら案の定凍結されていました。まぁ自分が悪いですね。
Unclaimed Propertyの存在を知る
そんな中で、2019年にGoogle I/Oに参加するためにベイエリアに行きました。セミナーの合間を縫って、銀行の店舗に行って自分の口座がどうなっているのかと聞きにいきました。30分くらいやりとりした結果、既に凍結されているので銀行側ではどうしようもない。Unclaimed Propertyという制度があって、そこで自分の凍結された資産がみることが出来るよと教えてもらえました。
サイトのSearch for Unclaimed Propertyで、適当な日本人の苗字をいれてみてください。わりとわんさかと出てくると思います。相対してくれた銀行員の方は、これで取り戻すことが出来るよ、おめでとう。今晩は良いものを食べるといいよと言ってくれました。
Unclaimed Propertyを取り戻すための戦い
Unclaimed Propertyの存在を知ったので、次はそれを取り戻すための手続きです。現地の銀行員さんの話では、さくっと出来るよみたいな感じだったのですが、なかなか一筋縄にいかなそうなので日本に帰ってから手続きをすることにしました。調べた限り、ざっと必要なのは下記の書類
- 現在有効な日本のパスポートコピー
- アメリカのSSN(ソーシャルセキュリティーナンバー)
- 日本の現住所を証明する書類
ただ私の場合、苗字が変更になっているので、本人であることを証明するのが大変です。必要そうな書類をいろいろ集めてみたものの、自分で申請することは早々に諦めました。海外のUnclaimed Propertyの返還手続きを代行してくれる行政書士がいたので、いくつか比較検討の上で対応をお願いすることにしました。
書類を集める旅と、意外に役にたった習慣
行政書士のアドバイスを元に、必要な書類を集めていきました。自分でやろうとしていた時に、戸籍附票などは取り寄せていたのですが、更に沢山のものが必要でした。なかには口座凍結時に住んでいた住所(賃貸)に住んでいたことを証明するための書類といったものもありました。公共料金の支払いで良いですよとサラッと言われましたが、何度も引っ越している私には難易度の高いリクエストでした。その時に役にたったのが、請求書のスキャンです。アメリカ時代にクレジットカードの請求が間違えられることが多いから、レシートなどは保管しておくと教えてもらいました。ただ紙で保管をするのも大変なので、片っ端からスキャンして電子で保存していました。未整理な状態で放り込んでいただけですが、10数年を過ぎて役にたった訳です。過去の自分、偉いと思いました。それ以外にも、公証役場にいって証明書を書いてもらうなど、人生の中でなかなか経験することが無い経験がありました。
行政書士の方に、これらの書類を全部英訳して申請となります。
返還の小切手の受け取りと、換金の話
手続きを始めてから10ヶ月ほどで、無事にUnclaimed Propertyの返還の小切手を受け取ることができました。手続きは10ヶ月弱でしたが、口座凍結されてから10年以上経過していたのですよね。何を悠長なことをしていたのだと思います。
米国の小切手が換金できない
小切手を受け取ったので、換金しようと意気揚々と銀行に行きました。そうしたら、なんと今は殆どの銀行では米国の小切手の換金をできないとのことでした。なんでもマネーロンダリング等の対策のようです
三菱UFJ 2019/5/31終了
三井住友 2018/7/2終了
みずほ 2018/12/3終了
自分が見つけた中では、唯一SMBC信託銀行が取り扱いをしてくれました。池袋に店舗があったので、会社を休んで口座開設へ。たいした資産もないのに信託銀行で口座開設できるのかと心配しましたが、普通に開設できました。よかったよかった。小切手はドルのまま放り込んでいます。定期預金に変えておいた方がよさそうな感じです。
まとめ
銀行口座を放置しておくと、後が大変です。ズボラなことはしないようにしましょう。これは日本の口座でも、同じようなことが起きると思うので、使っていない口座は解約しておいて2〜3個くらいに集約しておくことをお勧めします。私もいろいろな口座もっていたのですが、今回のようなこともあって都銀、ネット銀行、地銀、信託銀行と用途別にそれぞれ1つに集約しました。
あと書類は、雑にでもよいのでスキャンして電子化しておくと、思わぬ時に役にたつかもしれません。書類関係捨てられずに困っている人も多いと思いますが、スキャンしておけば躊躇なく捨てられます。
世の中の99%以上の人にとっては必要がない情報ですが、私のUnclaimed Propertyの返還の記録を残して記憶の供養をしておきます。