本日 9 月 10 日、BOOTH で新刊『生成AI時代のクレデンシャルとパーミッション設計 - Claude Code を起点に』を発売しました。BOOTH の商品ページから購入できます。また、DeveloperZineで Developers Summit 2026 KANSAI のベストスピーカーが発表され、同じ主題で話した 8 月の講演(A-6)が 3 位に入りました。大阪で 30 分話したときのスライドはSpeakerDeckで公開されています。聞いてくださった方、投票してくださった方、ありがとうございました。
5 月に書きますと宣言した本が、これです。ようやく出せました。

■ きっかけは、席を外した事での気付き
この課題感のきっかけは、自著を音声化する小さな個人プロジェクトの経験です。AWS の Polly に Claude Code から API を叩かせて朗読音声を作る作業で、CLI には AWS SSO で取得した一時認証情報を設定していました。有効期限は 60 分です。長めの作業なので、起動して後は任せて席を外していました。
戻ってみると作業は終わっておらず、途中で止まっていました。許可プロンプトの待ちによる中断ではなく、一時クレデンシャルの期限切れでした。これ自体は、特に大きな問題ではなく、手元で SSO の再認証すれば済む問題ではありました。
一方で再開しようとして IAM ロールを見直したところ、過去の作業で付けた広い権限が、そのまま残っていました。作業の中断より、こちらのほうが気になりました。
広めの権限と自律実行は、掛け算で大きな事故になる可能性があります。片方だけなら影響は限られますが、両方が揃うと、想定していない操作が想定していない範囲まで届いてしまう可能性があるからです。だから「何を持たせるか(クレデンシャル)」と「何をさせるか(パーミッション)」はペアで設計する必要があります。片方だけ整えても、もう片方から想定外の操作が通ってしまいます。これが本書の主題です。
■ 確認で守るのをやめて、設計で守る
では、都度の確認はこの構造を止めることができるのでしょうか。みなさん、Claude Code の許可プロンプトに、ほぼ全部 Yes を押していませんか?私もそうでした。Anthropic が 2026 年 5 月に公表したところによると、許可プロンプトの約 93% は承認されているとのことで、私だけではなさそうです。その Yes は、何を守れるのでしょうか。
本書の立場は次のスタンスです。セキュリティは事前設計で確保し、人間の都度判断をセキュリティ制御として当てにしない。セキュリティと自律性はトレードオフだ、とよく言われます。ただ、都度確認が形だけになっているなら、実はどちらも実現できていません。これは仕組みで両立させるしかない、というのが私の考えです。つまり、自分もAIも信用はしないということですw
auto mode が既定になった今、やることは「許可の範囲を狭めて都度確認させる」ではなく、許可を広げたうえで、やらせないことの境界線を deny ルールで引くことです。これには順序があって、まずコンテナや Sandbox で実行環境を固め、次にパーミッション設計で「許してよい範囲」を確定し、その範囲は任せます。人がその都度判断しなくて済む状態を、設定で先に作っておくわけです。この順序を、設定テンプレート付きで解説するのが本書です。
理想を言えば、最初から完成系で組めればよいです。でも現実には「もう使っていて、設定は初期値のまま」から始まる方が多いのではないでしょうか。本書もそこからのどう改善していくのか解説しています。
■ 何を持たせ、何をさせるか。本書の中身
AI に鍵(クレデンシャル)をどう渡すかは、「どこに置くか」の話ではなく「AI に読ませるかどうか」の話だと本書では整理しています。第5章では、AI が秘密値にどう触れるかを 4 段階に分けて解説しています。
第 1 段階 直読み型。AI が .env や ~/.aws/credentials を自分で開く
第 2 段階 平文外部注入型。平文の秘密値を AI の外に置き、起動時に環境変数で渡す
第 3 段階 ストア経由注入型。暗号化されたシークレットストアから取り出して環境変数に注入する
第 4 段階 非直読み型ブローカー。AI は秘密値を一度も見ず、SDK や IAM ロールが裏で認証を処理する
段階が進むほど、AI が秘密値に触れる機会は減ります。目指すのは第 4 段階です。ただ、理想だけ書いても、いま第 1 段階で動かしている方の次の一歩にはなりません。そこで規模別の現実解も表にして添えました。個人開発者ならまず第 1 段階を避け、第 3 段階、つまり op run や Secrets Manager からの注入をコンテナと組み合わせるところまでを目指します。組織なら第 3 段階で監査と認証の要件を満たしておき、自動化の要件が出たときに第 4 段階、Bedrock と IAM ロールの組み合わせなどへ移る、という筋です。自分の現在地と次の一歩を選ぶための表として使ってください。
目次は次のとおりです。全 8 章と付録 4 本で構成しています。
第1章 Claude Code のクレデンシャル × パーミッション地図
第2章 パーミッション設計 — settings.json・hooks・CLAUDE.md
第3章 隔離戦略 — Sandbox・コンテナ・機微ファイル
第4章 API 経路と AWS 連携
第5章 シークレット集中管理 — AI に渡す/渡さない設計
第6章 外部リソース連携 — MCP と外部サイト参照
第7章 チームで扱う — テンプレ化と共有
第8章 セキュリティと監査付録A 個人/チーム/業務向け settings.json テンプレ集
付録B .mcp.json テンプレ集 + ガイドライン文書テンプレ
付録C Claude Code × AWS Bedrock 設定レシピ
付録D 参考: 関係する業界フレーム
想定しているのは、Claude Code を使い始めた個人開発者と、組織導入を検討するエンジニアです。今日初めて触る方は、第1章のクイックスタート「最初の 30 分でやる 4 つの設定」と付録A から読んでください。4 つとは、機微ファイルの読み出しを deny で禁止すること、Sandbox を有効にすること、許可モードを Manual にして使い始めること、trust dialog には .claude/ の中身を見てから答えることです。ここはコピペで進めて、背景は各章で読む構成にしています。
付録には settings.json、.mcp.json、Bedrock の設定テンプレートを収め、貼って動かすところまでを本の範囲にしています。ただし、貼れば終わりではありません。どの設定を組織として固定し、どれを推奨に留め、どれを個人の裁量に残すかという切り分けは、テンプレートを貼っても決まらないからです。個人運用なら自分で決めれば済みますが、チームで共有する settings.json や .mcp.json は、誰がどこまで強制するかを決めて初めて、チームで使える設定になります。
■ 30 分では話せなかったところ
デブサミ関西で同じ主題で 30 分でまとめています。が、順序と考え方の説明までが精一杯でした。講演を聞いてくださった方にも、本書でより具体的な解説をしています。
MCP サーバに何を持たせ、.mcp.json をどう組むかは、MCP サーバをクレデンシャルブローカーとして使う構成まで含めて第6章で扱います。前述の切り分けと、ガイドライン文書に何を書いて何を強制しないかは、第7章と付録B です。Claude Code の操作と監査証跡の考え方についても、第8章に簡単にまとめています。どういうことを考えないといけないのかの整理の一助になるはずです
■ 仕様と入手方法
内容は 2026 年 8 月時点の Claude Code の仕様に基づいています。動きの速い領域なので、変化はどんどん出てくるとは思います。ただ基本的な考え方を示しているので、それこそAIにこういうことをやりたいのだよと指示を出すと、その骨格に沿って最新の情報を調べながら構築してくれるはずです。実際、私もそうやって構築してきました。
技術書典21(2026 年 11 月)でも頒布します。また、2019 年に出した初代を全面改訂する『AWSの薄い本 IAMのマニアックな話』改訂第2版も予定しています。AWS観点で生成AI時代のIAMをどうするかを書く予定です。Claude Code 側を本書、AWS 側を改訂第2版という分担です。本書の第4章、AWS 連携の章は短命クレデンシャルと監査の部分をより具体的に書こうと思っています。













