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執筆のテーマ選びについて #技術書典 参加に寄せて

 前回、 技術書典で刷り数を決める際に考えてたことをまとめました。刷り数は最後の段階なので、今回は一番最初に考えないといけないテーマについて書いてみます。多分、テーマは技術書を作る上で一番重要で、テーマが決まるとほぼ自動的に読者数が決まります。じゃぁ、そこをどう考えて戦略たてるかという話ですね

技術書の市場規模とカテゴリの話

 専門書と呼ばれるジャンルの本は、市場規模が予め決まっています。技術書もその一つで、技術を学ぼうとする人しか読みません。日本のITエンジニアはおおよそ100万人弱で、恐らくその中で自分で技術書を買う人は半分もいないでしょう。そして、一口にITエンジニアといっても、その中では細分化されています。インフラエンジニアやフロントエンジニア、或いはネットワークエンジニアといった区分があります。実際には更に細分化されるし、レベルによってピラミッド構造になっています。つまりAWSで日本語でどんなに売れる本を書いたとしても、100万冊売れることは絶対ないのです。

和集合と積集合

 最初から夢のない話からスタートしましたが、それでは出来るだけ多くの読者に届くにはどのようにすれば良いのでしょうか?1つ目の戦略としては、隣接する分野の読者を呼び込むことです。例えば、AWSをテーマにしたとしたら、アプリエンジニアにも読んでほしいといったケースですね。うまくいくと次の図のように和集合となり、2つのカテゴリーの読者からも読まれるようになります。

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 問題は、これが上手くいくかどうか。失敗するとどうなるかというと、次のように積集合になります。つまり、AWSとアプリを両方ともやる人だけが読むという本になります。そして、その可能性の方が高いです。

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 という事で、当たるとホームランだけど、三振の可能性が高いというのが2カテゴリーにまたがる本です。

カテゴリー内で、ニッチなテーマ

 では、逆にヒットを打てる可能性が高い戦略は何でしょうか?それは、カテゴリー内で、特定のテーマに特化した書く方法です。AWSであれば、その中に多くのサブカテゴリーを内包しています。サブカテゴリー一個一個の需要は小さいので、一般的な商業誌では取り上げづらいです。一方で、既にAWSを利用しているという人にとっては、広く浅い情報より一つのテーマに特化した方がありがたい場合もあります。その場合、多少値段が高くても買うという判断になります。

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 同人誌はこのニッチなテーマと相性がよくて、技術書典で頒布されている多くの本がこの形式なのではないでしょうか?今回、私が書いたIAM本もここを狙って書いています。ちなみにAWSは機能が多いので、この形式で書きやすいです。私自身、深堀りしたいテーマとして、次のようなものがあります。

  • Step Functions
  • Cognito
  • AWS Organizations
  • S3 + Athena
  • GuardDuty

 自分一人で書いていても尽きることがないので、手分けして書いていこうかなと考えています。

市場を広げる本

 本のタイプとして、実はもう一つあります。それは、市場を広げるタイプの本です。手前味噌な事例で申し訳ないのですが、昔クローラー・スクレイピング本を書いた事があります。クローラーを必要とするエンジニアは少ないと思いつつ、クローラーという手法はエンジニア以外にも役に立つだろうと思っていました。そういたら、上手いことあたって、マーケティングをしている人や、統計学でデータを集めている人たちにも一定数の支持を受けることができ、クローラー本としては予想外の売れ行きとなりました。

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 上記については、違うカテゴリーを呼び込むという意味では和集合と似ています。が、こちらは、2つの分野にまたがるのではなく、他分野の人を呼び込むという手法です。これは上手くいくと非常に多くの読者を呼び込めます。技術書典でいうと、mochikoさんや湊川さんがこのタイプの本を得意としているのかなぁと思います。商業誌では、「人工知能は人間を超えるか」などが、このタイプだと思います。

テーマごとの母数の見極め

 テーマ選びの手法は何となく理解頂けたと思うのですが、じゃぁそれぞれのテーマの母数はどうやって知るのかという疑問を持つと思います。これについては、私はハッキリとした答えは持っていません。ただ長年ブログや執筆をしてきた経験があるので、何となくの感覚を持っているというのが正直なところです。技術的な内容でバズっても、その後に書いたワインのブログで100倍くらい閲覧数が多かった時は、やっぱりそうよねという感想しか沸かなかったりします。
 なお、ちゃんとした数字を調べようと思うと、統計データや関連分野の本のタイトル数・売れ行きのランキングなどを丁寧におっていけば、ある程度推測は出来ると思います。私は、そこまでしていませんが。

それより大事な事

 ということで、テーマ選びの際に考えていることを連連と並べてみました。同じ労力を掛けて書くのであれば、少しでも多くの人に届いた方が良いと私は考えています。でも、それより大事な事があると思います。
※必要とする人が少なくても重要な事というのは、もちろんあります。そこを狙うのも、もちろん良いと思います。

- 自分が書きたい事を書いて、結果として自分を成長させること
- 一度やってお終いじゃなくて、続けること

 勉強会の発表や同人誌の執筆すると、一番勉強になるのはやった本人なのですよね。対象に対する理解が飛躍的にあがります。ただ、それが一度目で成功するかというと、中々そうはいかないです。では、成功するにはどうすれば良いのか?答えは成功するまで続けることです。技術書典は、小さなコストで挑戦できます。また開催間隔もおよそ半年くらいと短いので、何度も試せます。今回色々な課題が出てきたようですが、私は素晴らしいプラットフォームだと思います。Let's Try!!

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booth.pm