先日の技術書典7で、「AWSの薄い本 IAMのマニアックな話」という同人誌を出展しました。技術書典に参加して面白かったのが、どれくらい売れるのかを予想しながら印刷冊数を検討することでした。どういった検討を経て決定したのか、まとめてみました。
2つのパラメーター
技術書典で考えるべきパラメータは単純に2つだけです。見込み販売数と印刷数です。見込み販売数は、サークルチェック数を中心に類推し、印刷数は自分で決めます。それぞれ、見てみましょう。
見込み販売数
まず頭を悩ますのが、見込み販売数です。これは自分だけでコントロールできるものでないので、いかに正確に読み解くかが勝負になります。幸い技術書典には、サークルチェックという機能があり、この数字を元にある程度の販売数を見通すことができます。更に、先人たちの知見の蓄積の結果、開催何日前にどれくらいのチェック数だったら、最終的にどこまでいくかの予想のモデルまであります。やぎっちさんが、毎日呟いて頂いて大変参考になりました。ありがとうございます。
#技術書典#被チェック数予想
— yagitch(やぎっち) (@yagitch) September 21, 2019
印刷部数の検討材料にしてね
【9月21日 21:00時点】
現在の被チェック数が
73…最終100前後
146…最終200前後
292…最終400前後
438…最終600前後
前回の傾向から、最終的な被チェック数は当日の来客数と同程度と見込まれます
以下も参考に https://t.co/S2IE4LuSAf
この被チェック数を元に、自身の予想を加えて見込み販売数が決まります。
印刷数
見込み販売数が解かると、次はいよいよ印刷数の検討です。まず、バックアップ印刷所である日光企画さんの印刷代をみてみましょう。プランは色々ありますが、一番標準であるオフセット・スタンダードフルカラーで考えてみます。
次の画像は、ボリュームゾーンを書き出したものです。今回、私は124ページで想定で検討しました。
見るとすぐに気がつくと思いますが、印刷代は冊数に比例しません。冊数が多くなると1冊あたりの単価は顕著に低くなります。
例えば、124ページ印刷で50冊の場合だと1冊あたりの単価は1,095円ですが、500冊だと236円になります。大量生産すると原価が安くなるということを実感できますよね。これが、技術書典に出展する際の悩みどころであり醍醐味だと思います。
収支シミュレーション
それでは、印刷数をどう決めれば良いのでしょうか?まずは124ページ前提で、損益分岐点を確認してみましょう。損益分岐点は、売上と費用の額がちょうど等しくなる販売数量です。販売価格を1,000円の場合と、1,500円の場合で検討しています。
冊数が少ない場合、損益分岐点となる冊数が多いのが解ります。特に124ページとある程度厚めにしているので、1,000円で売った場合は50冊の場合は全部売り切っても赤字になります。1,500円で売ると損益分岐点も低く利益が出やすくてバラ色に見えます。
ただ、ここで見えないパラメータとして、値段と売上数に対する価格弾力性です。価格弾力性は、値段の変化に対して売上数がどれくらい反応するかです。下の図でいうと、出来るかで均衡点に近いところで値段をつけると良いです。
技術書典の場合、ある種お祭りのような場なので、価格弾力性は低い(値段が変化に対して売上数が変化しづらい)と考えました。なので、思い切って1,500円に設定しています。ということで、売上数は400冊弱と予想し100冊余らせる前提で、500冊印刷することにしました。これだと、100冊売れば損はしないし、予想通り売れれば充分な利益を得ることができます。
収支シミュレーションその2
今回は1,500円で124ページという前提でしたが、この値はどちらも一般的なパターンではないと思います。次は、1,000円で84ページの場合で考えてみましょう。このケースの収支シミュレーションは次の通りになります。次回参加するとすると、新刊・既刊でサークルチェック数で予測が難しくなるので、その場合に備えての検討です。
100冊前後の売上見込の場合で、100冊するか200冊するかが悩みどころだと思います。100冊の場合は印刷代が46,790円、200冊の場合は56,300円とおよそ1万円の差です。この1万円の差をどうみるかですね。100冊の場合の最大利益は53,200円、200冊の場合は143,700円です。利益を最大化するか、損失を最小化するかで決めればよいと思います。私の場合、たぶん200冊刷って余った分は色々なところで配布して活用すると思います。
感想
はるか昔、学生時代に経済学部だったので、生産管理の授業でこんな事の計算をしてたのを思い出しました。その時は、もっとちゃんとモデルがあったような気がしますが、すっかり忘れてしまいましたがw 技術書典に参加することで、このような経験をすることができるのが素晴らしいと思います。またこの後はBOOTHで販売して、マーケティングも学べますね。こちらも色々試しているので、また報告します。
出展したAWSの薄い本 IAMのマニアックな話は、BOOTHで購入できます!!
出品以来、BOOTHの技術書典7の新刊ランキングでほぼ一位継続中の模様です。
booth.pm
2019年9月30日 11:12追記:
テーマ選びの参考に、記事を書きました。対象読者がどれくらいいるのかの見極め方です
blog.takuros.net
See Also:
#技術書典 に初出展。AWSの薄い本 IAMのマニアックな話を書きました
#技術書典 に出展する『AWSの薄い本 IAMのマニアックな話』はこんな本