プログラマでありたい

おっさんになっても、プログラマでありつづけたい

絵本作家という無理ゲーと、幼児向けスマフォ・タブレットアプリについて

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 世間一般並に子供に絵本を読み聞かせているのですが、ついつい気になることがあります。それは、絵本の版数です。数十版なんかザラで、強者だと第100版とか第200版とかあったりします。どんなに増刷しつづけるのという世界です。そもそも私が子供の時に読んだ記憶がある絵本が、定番として今でも読めるのですよ。よく考えたら、絵本の世界はほぼ流行りと無縁ですし、読む人は毎年変わっていくので定番本が残るのは当たり前です。となると、絵本作家というのは、かなり厳しい世界なのではと思います。競争する相手は、同時代の人だけでなく過去の作品とも戦わないといけないのです。一般本の世界でいうと、夏目漱石とか芥川龍之介とかと競争する必要があって、かつその販売力が数十倍なのではという状況です。昔その人に憧れてテニス始めたら、プロになってもまだクルム伊達公子が活躍してるような感じです。或いは山本昌ですか。それって、何て無理ゲーと思えてきます。


 どんな世界かと思って、絵本業界の市場規模を調べてみました。"出版指標 年報"に出版関係の統計がまとまっていて、かつ児童書等の市場規模も出ているようです。ちょいと興味程度なので、14,000円を払うでもなく図書館に調べにいくでもなく、既に調べた人の結果を引用させて貰います。
 「絵本のマーケットはブルーオーシャン?!|絵本の会社えびばで号 社長の挑戦記」によると、児童書市場は、940億円。そのうち絵本市場は、およそ400億円。内訳は、次のようになるようです。

  1. 往年ベストセラー 1/3
  2. 図書館、公共 1/3
  3. 新刊 1/3


 図書館、公共カテゴリー内にベストセラー・新刊が含まれているかは謎ですが、新刊に絞って考えます。新刊の市場規模はおよそ130億円。新規の新刊の発行数が年1,500冊前後のようなので、1冊あたりの売上の平均が、866万円となります。これを作家、編集者・出版社、印刷会社、配送会社、小売が取り合うとなると、かなり厳しい世界ですね。
 物語を作るとか絵を書くとかで、現在の状況で出版レベルに持っていける人は、かなり稀有な存在だと思うので、その人達の生活が成り立つレベルに儲かる仕組みが無いかなぁと思います。


 一方で、最近急速に伸びている市場があります。乳幼児向けのスマフォ・タブレットのアプリ市場です。色々試してみましたが、かなりよく出来たアプリも無料で遊ぶことが出来ます。それらのアプリの儲けのパターンとしては、広告型と有料アドオン型。主流としては広告型が多いように思えます。儲かっているか、儲かっていないか。恐らく結構儲かっているのではないのかと想像しています。その理由としては、クリック率の高さ。
 乳幼児に遊ばせると解るのですが、バナー広告をバンバン叩きます。そして、そのうちサファリなどで広告が出たら、即座にアプリに戻るすべを覚えます。推測ですが、一般的なWebサイトのクリック率に較べて群を抜いているはずです。また、スマフォアプリで異常クリックでアカウント無効という話は今のところ聞いたことが無いので、Google AdsenseなどのWebサイト向け広告に較べて基準はまだ緩いのだと思います。効果測定などの検証のレベルが、まだ達していないのでしょう。
 そして広告の出稿側としては、乳幼児向けアプリは殆ど効果がないと思います。実際に子供向けのアプリで、ローンの広告とかバンバンでているので、なんだかなぁという状態です。今後予想される方向性としては、アプリのカテゴリによる広告の精査、もしくは無効なクリックの検出の方向に進んでいくでしょう。となると、乳幼児向けのアプリも減っていくのではと思います。
 その後釜に、良質な絵本のアプリが埋めてくれればと思いますが、無理なんでしょうね。一度、乳幼児向けアプリでも作って、市場感を肌感覚で味わってみるのも良いかなと考えています。そこはかとない感想ですが、ここ数年で大変化が起こる業界なのかもしれませんね。


参照:
絵本のマーケットはブルーオーシャン?!|絵本の会社えびばで号 社長の挑戦記


星新一の本が、Kindleで殆ど読めるようになっていた


 以前ちょっと紹介したのですが、星新一の本がKindleで読めるようになっています。そして、最近改めて見たのですが、星新一の殆どの著書が買えるようになっていました。電話の内容によってコマーシャルが入るというGoogleのアドセンスを予言したような声の網とか、「ノックの音が」の出だしで全編はじまるノックの音がとか、ショートショートから離れて自分の父親を通して、明治時代やアメリカを伝える明治・父・アメリカとか、珠玉の作品が並んでいます。
 私も出始めのころにKindleで読んでいたのですが、読了後に新たな本をリコメンドされるので無限ループに入ってしまいました。一巡して止まってたのですが、再びループに入ってしまいそうです。


 カバンの中に、星新一を全作!!どうですか?

 
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銃・病原菌・鉄のジャレド・ダイアモンドの本がKindleで読める!!



銃・病原菌・鉄のジャレド・ダイアモンドの本がKindleで読める!!


 私の最も好きな本のうちの1冊である「銃・病原菌・鉄」がKindleで発売決定したようです。2013/7/12発売で、もう注文出来る状態になっています。併せて、「文明崩壊」と「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」もKindle化します。私は文明崩壊は読んでいないので、これを機に買うことにしました。かなり楽しみです。


 下の文章は初めて読んだ時の感想ですが、見ているうちに改めて読みたくなってきました。

人類の発展史を、環境の差異に着目して分析しています。ありそうで無かったこの視点ですが、読んでいて度肝を抜かれます。農耕が始まった地域と始まらなかった地域。大陸が東西に広がっているのと、南北に伸びていることの違い。家畜化出来る野生種の有無が、文明に与えた影響。文字を発明するということの困難さ。不毛の大地・オーストラリア。興味深い分析の数々で、読むのが止められなかったです。

 例えば、農耕について。今では大規模な農業地になっているところでも、古代では狩猟採集しか行われていないところは多数あるようです。この原因は何か?単純にそこに住んでいた人の資質・文化ではなく、野生種によるところが大きいとか。実は、野生の植物で栽培化することが出来るものは非常に少ないそうです。また、その分布にも偏りがあるそうです。例えば麦類でも、肥沃な三角地帯と呼ばれる人類が最初に農耕を始めたとされる地域では栽培可能な野生種は多数あっても、アメリカ大陸やオーストラリアでは殆ど存在しなかったそうです。農耕が出来るか出来ないかでは、土地1ヘクタールあたりの採取可能なカロリー数も格段と違ってくるので、この時点から発展の差異が出てくるとか。

 人類の発展史を、南北と東西の違いや野生種による違いに着目しての分析を初めて読んだ時は、そういった視点があったのかと度肝を抜かれました。この説に対する賛否については検証していないので今でも正しいのかは知りませんし、論拠が薄いところも多く強引な論説が目立つのも事実です。一方で本書を読んだ時に、新たな考え方を知って非常に興奮したのを覚えています。
 ジャレド・ダイアモンドの本は分厚くて持ち歩き辛く読んでいない本が多いので、これを機にどんどんKindle化してくれればなぁと思います。併せて、ウィリアム・H. マクニールの世界史もKindle化してくれないものですかね?


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エネルギーについて考えてみよう。「探求――エネルギーの世紀」

 昨年末に原油や天然ガス、次世代のエネルギーについて、学んでみたいと思いダニエル・ヤーギンの「探求――エネルギーの世紀」を読んでみました。上下巻併せて、1,000ページ近くとかなりの大作で読むのも時間がかかります。でも、是非一度読んでエネルギーについて考えてみるのが良いのではと思います。ニュースの背景を知る上でも、かなり約にたちます。
 この本は原著が2011年9月20日に日本語版は2012年4月3日に発売したとあって、福島原発の事故も踏まえて最新のエネルギー事情について丁寧に書かれています。一方でAmazonのレビューに書かれている通り、訳については幾らか問題ある部分も多く読みにくいところもあります。それでも、世界を取り巻く今のエネルギーの現状を知るには最良の一冊です。


 第1部と第2部は原油に焦点を当てています。中東以外の石油や、非在来型と呼ばれるオイルサンドやシェールガスなど。この辺りを読んでいると、当面の間は石油が枯渇する心配はないなと思います。一方で、今までのように石油が安い時代が戻ることもないことが解ります。いわゆる非在来型石油は採掘コストが高く、石油が安い時には採算があいません。なので、シェールオイルなどを見て、石油が安くなると考えるのは間違いです。
 第4部以降は、主に次世代エネルギーの話です。太陽光・風力・水力と色々ありますが、行き着くところはコストと安定性の問題になります。読んでいる限りでは、組み合わせとバッテリーの重要性になるのではないかと思います。また風力などのエネルギーの大部分は、結局は太陽のエネルギーが形を変えたものという考え方は面白いなぁと思います。
 また現在の気候変動の研究が、氷河の研究から始まったという事実には驚かされます。何がどうつながるか、凡人には解りませんね。面白い本なので、興味がある人は是非時間を掛けて読んで色々考えて欲しいですね。


目次

第1部 石油の新世界
 ロシアの復帰
 カスピ海ダービー
 カスピ海の対岸
 スーパーメジャー
 石油国家
 流通途絶
 イラク戦争
 需要ショック
 中国の勃興
 追い越し車線の中国
第2部 供給の安全保障
 世界の石油は枯渇するのか?
 非在来型石油
 エネルギーの安全保障
 ペルシャ湾の流砂
 海上のガス
 天然ガス革命
第3部 電気時代
 交流電気
 核燃料サイクル
 価格統制の崩壊
 燃料の選択
第4部 気候とCO2
 氷河の変化
 発見の時代
 リオへの道
 市場を作る
 グローバルな政治目標
 コンセンサスを求めて
第5章 新エネルギー
 再生可能エネルギーの再生
 科学実験
 輝く光の錬金術
 風の謎
第五の燃料―
 効率
 節約の溝を埋める
第6部 未来への道
 炭水化物人間
 内燃機関
 偉大な電気自動車実験
“偉大な革命”



参照:
天然ガスの時代:「次世代エネルギーは終わった」とアメリカは言う WIRED.jp

Kindleならば、星新一のショートショートが読める!!

 正月にKindleで読む本を探していたら、気が付きました。何と星新一のショートショートがKindleで読めることに!!中学・高校時代にハマってほぼ全て読みましたが、何回もの引越しを経て手元にありません。たまに読みたいなぁと思っていたものの、スペースの関係でまた全部揃えるのはキツイなぁと思っていました。
 そこに出てきたKindle版。これは有難いです。スペースはとらずに読みたい時にいつでも読めます。最近思っているんですが、Kindleは最新の本を読むのではなく、過去の名作を入れておくのが良いのではないでしょうか?ビジネス書とかは一度読めばそれっきりなので、あまり繰り返す読むことはありません。そんな意味で時代を超えて残される名作とKindleの組み合わせは最適に思えます。興味がある方は、是非お試しあれ。


星新一の検索結果


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読書のコストの話。或いは電子書籍が本の頁数を変えるかもという予想

 Kindleの登場で再び注目をされている青空文庫をはじめとする無料の本。無料だったらみんな読みまくるのではと思われがちですが、実際のところそうはなりません。何故なのか考えてみました。


 読書には、本代という目に見えるコストと、読書に費やす時間という見えにくいコストがあります。無料の本で節約出来るのは前者の本代だけです。後者は依然として同等のコストがかかります。では、読書に費やす時間のコストとは、どういったものなのでしょうか?単純に考えると、読んだ時間×その人の時間給です。時給1,000円で働いている人が2時間で読んだら、2000円です。この観点で考えても、もともと本というものは、本代より読むためのコストの方が高いことが多いのです。人は無意識でそのことを知っているから、無料の本でも飛びついて読まないのです。
 さらにもう少し考えると、時間という財の特殊性です。先の例では、時間とお金を交換可能なものという前提で考えています。しかし現実的には、等価交換可能なものではありません。億万長者がお金にものを言わせて、大量の本を読めるかというとそうではないでしょう。時間は有限なのです。ということで、ますます読書に費やす時間は貴重ということになります。


 本のコストの内訳で議論されるのは、著作権料や印刷、流通、小売の取り分の話だけです。いわば業界側の話です。もう少しユーザーサイドの事情を考えれば、出版業界が再び隆起する術が見つかるかもしれませんね。Amazonは、自分にあった本を見つける可能性を高めるリコメンドの機能でユーザの信頼を獲得し、いつでもどこでも読めるKindleでユーザの隙間時間を有効に活用出来るようにしています。本を出版する側にも、もう少し工夫が出来るかもしれません。
 個人的には、今の本のページ数は300〜500ページが多いですが、電子書籍の普及で変わるかもしれませんね。例え10ページでも有益なものであれば、購入する人は多いでしょうし、長い文章を読むよりそれの方が良い選択する人も出てくると思います。紙の出版だと流通コストを考えて、本にある程度の値段をつける必要があります。しかし、電子書籍の場合は、あまりそこを考える必要がありません。100円で10分で読んでもらうという観点の本が出てくるかもしれませんね。私も挑戦してみたいです。


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人月の神話を改めて読もう

 人月の神話は、実に37年前(1975年)に発売された本ですが、今でも示唆に富みます。というか、IT業界に入ったらまず読むべき本の一冊です。(実際のところは、誰にも読まれず同じ失敗がくりかえされています。)ということで、つべこべ言わずに読めと強要できる数少ない本の一冊です。


 以下、メモ。

スケジュールの目安
1/3 計画
1/6 コーディング
1/4 単体テストおよび初期システムテスト
1/4 すべてのコンポーネントを統合して行うシステムテスト

 各工程の定義は考える必要があるけど、テスト重要という話。テストを品質保証の工程と考えて、開発(コーディング)工程に品質保証の仕組みを組み込むことが大切ですよね。

ブルックスの法則
遅れているソフトウェアプロジェクトへの要因追加はさらに遅らせるだけだ

 これが解らぬ人が多いんだよなぁ。実際のところ。