噂の「フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」を読みました。評判に違わぬ一冊です。詳しい内容は本書を読んで頂くとして、考えさせられるのが希少な資源と潤沢な資源についてです。
私というか人類は資源は稀少なものという前提で行動するようインプットされてきたようです。事実間違いではないのですが、物質の世界から離れてビットの世界に目を向けると、そうでも潤沢な資源というのは幾らでもあるのです。逆に今まで潤沢と考えられてきたものが希少なものと捉えられることもあるようです。例えば、人々の興味・関心。いわゆるアテンションですが、情報が無限に近い程増えてくると、逆にアテンションの方が希少になります。この構造の変化に早く対応したものが、勝つのかなぁと朧げに思いました。
以下、読んでてメモした文章です。
希少 | 潤沢 | |
---|---|---|
ルール | 「許されているもの以外はすべて禁止される」 | 「禁止されているもの以外はなんでも許される」 |
社会モデル | 父権主義 (「何が最良かは私たちが知っている」) |
平等主義 (「何が最良かはあなたたちが知っている」) |
利益プラン | ビジネスプラン | これから考える |
意思決定プロセス | トップダウン | ボトムアップ |
マネジメント方法 | 指揮統制 | 制御しない |
社会モデルのところの、「何が最良かはあなたたちが知っている」。この考え方は大切ですね。
フリー・ワールド
- 中国とブラジルは、フリーの最先端を進んでいる。そこから何が学べるだろうか?
中国の著作権違反が、逆にブランド価値を高めているという考え方は目から鱗でした。そうである部分と、そうでない部分はあるのでしょうが、そういった側面も確かにあるのかもしれません。今まで考えてみたこともなかったです。
(アメリカで学ぶ中国人留学生に模倣の何が悪いのかを説明するのに苦労することは多い。師のまねをすることは、中国では学ぶことの中心にあるからだ)。
これについては同感。「まなぶ」の語源が、「まねる」という説もあるくらいですからね。
消費者は欧米の高級ブランドをよく知っていて、それを上品で質の高いものだと見ており、できれば本物を買いたいと切望している。そして、次第にそれが可能になってきている。
生活水準があがれば、本物のブランドを持つようになるという話。
サイモンは、「民間がコントロールする原材料(穀物と原油を含む)の価格は、長期的にみて上昇しない」というみずからの考えに1万ドルを賭けようと申し出た。
1990年9月には、エーリックの指定した五つの金属のうち四つで価格が下がっていたのだ。
何故サイモンは書けに勝てたのだろうか?理由のひとつは、彼が優秀な経済学者で、代替効果について理解していたからだ。
これは、ある資源が希少となり、価格が上がりすぎると、人々は潤沢に供給出来る代替品を見つけようとするので、希少な資源の需要が減ることだ
これは興味深いですね。原油や金属などの商品取引に対する投資は、資源は稀少なものという前提で行われていますからね。希少なものは、代替品が出てくるという考え方も必要ですね。
フリーランチ 一時期アメリカの酒場で流行した、飲み物を一杯でも注文すれば無料で食事(フリーランチ)ができるサービスについての言葉だ。
金融商品にフリーランチはないという語源です。
フリーのビジネスモデル
1.直接的内部相互補助
2.三者間市場
3.フリーミアム
4.非貨幣市場
フリーミアムの戦術
1.時間制限
2.機能制限
3.人数制限
4.顧客のタイプによる制限
無料のルール ー潤沢さにねざした思考法の10原則
1.デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
2.アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
3.フリーは止まらない
4.フリーからもお金儲けはできる
5.市場を再評価する
6.ゼロにする
7.遅かれ速かれフリーと競いあうことになる
8.ムダを受け入れよう
9.フリーは別のものの価値を高める
10.希少なものではなく、潤沢なものを管理しよう
フリーは魔法の弾丸ではない。無料で差し出すだけでは金持ちにはなれない。フリーによって得た評判や注目を、どのように琴線に帰るかを創造的に考えなければならない。
その答えはひとりずつ違うはずだし、プロジェクトごとに違うはずだ。その答えがまったく通用しないときもあるだろう。それは人生そのものとまったく同じだ。
ただひとつわからないのは、失敗の原因が自分の貧困な想像力や失敗への恐れにあるのに、それをフリーのせいにする人がいることだ。
タダには太刀打ちできっこない第7章はすべてこれに関する話で、特にマイクロソフトがどのようにオープンソース・ソフトウェアと競争することを学んだかを見てきた。要約すれば、フリーと戦うのは簡単なのだ。単純に無料のものよりよいもの、少なくとも無料版とは違うものを提供すればいい。
37シグナルズ者の創業者のひとり、デイヴィッド・ハイネマイヤ・ハンソンによれば、同社のマル秘戦略は、個人の顧客を対象にするのでなく(彼らに財布を開かせるのは大変だ)、大企業を対象にしているのでもない(競争もきびしく、購入を決めるまでに時間がかかりすぎる)。
そのかわりに「フォーチュン500社」ならぬ、「フォーチュン500万社」を狙う。つまり、満たされにくい特定分野のニーズを持つ小さな企業をターゲットとして、十二人ほどのチーム用のプロジェクト管理ソフトといった製品を売っているのだ。
ここは深く考えてみようと思う所です。
日本放送出版協会
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