プログラマでありたい

おっさんになっても、プログラマでありつづけたい

クラウドファーストとクラウドネイティブ

 今年の春(2015年3月)に出版したAmazon Web Services パターン別構築・運用ガイドの序文に次のような文章を書いています。

クラウドという言葉が一般的になってから、もう何年も経とうとしています。当初は、不慣れな従量課金やセキュリティへの不安から、採用する企業はごく一部の企業に限られていました。しかし、クラウド自身の進化と、それを取り扱うユーザ・企業・コミュニティの成長とともに、多くの企業がクラウドを検討・導入するようになりました。そして最近では、クラウドファーストという考え方のように、システムの導入の際はまずクラウドで実現できないかという考え方が当たり前になりつつあります。今では更に考え方が進み、クラウドネイティブという名のもとに、クラウドを前提としたアーキテクチャ・設計が採用されつつあります。

 半年前は、現時点ではクラウドファーストが浸透してきた所で、その次はクラウドネイティブであるものの、それには後数年は掛かるのではないかと考えていました。ところが先日のre:Inventに参加して、その時はもうすぐそこにあると感じました。言葉としてはクラウドネイティブではなく、Microservices(マイクロサービス)やServerLess Architecuture(サーバレスアーキテクチャ)などの文脈で語られています。中身はどれも共通し、AWSのフルマネージドサービスを利用し、低コストで効率よく可用性の高いシステムを構築していこうという内容です。

クラウドネイティブとは?



 ところで、クラウドネイティブとはどういうものを指すのでしょうか?私の中での定義としては、次のようなものを想定しています。

 クラウドネイティブとは、クラウドのサービスを前提に構築されたシステムおよびアプリケーション。仮想サーバ上で自前でシステムを構築していくのではなく、SaaSを最大限活用し拡張性・可用性のあるシステムを低コストで構築する。

 まぁEC2のインスタンスを一杯立ち上げて、その上でセコセコとアプリケーションを構築するのではなく、サービス組み合わせてビジネスロジックの部分だけ自前でしっかり書くというようなものを想定しています。

クラウドネイティブのメリット



 個人的には、オンプレミスのサーバをクラウドに持っていくだけでも、メリットは大きいと考えています。ハードウェア障害などの物理的な障害から開放され、オンプレミス時代には出来なかった時間単位でのサーバの増減などもできます。一方で、オンプレミスの構成を持って行くと、サーバの管理に手間が掛かるというのも事実です。例えば、OSやミドルウェアのパッチ当てやバックアップ・ログローテーション等の運用は変わらず必要です。
 AWSの場合、マネージドサービスと呼ばれるSaaS群を利用すると、その部分は全てAmazonがやってくれます。さらには、サービス単位で可用性や拡張性も保証してくれます。一番簡単な例でいうと、S3です。一度S3にファイルを置くと、利用者はそのデータの保全に対して考えることは殆ど全くありません。裏でディスクが故障しようが、データセンターが壊れようが、Amazonが全て対処してくれます。また、利用できるディスクボリュームの総量を気にする必要もありません。利用者はただ使うだけです。そして、使った分の対価を払うだけです。これは従量課金なので、将来的に100GB使うから、予めその分を織り込んで支払う必要もありません。
 AWSでは、同様のマネージドサービスが様々なレイヤーで増えてきています。ストレージから始まりキューやメール、さらにはコンピュートサービスまでです。現時点でも、殆どのシステムがサービスを組み合わせるだけで構築できるようになっています。ということで、サーバ管理が不要な時代が来ています。さらに、マネージドサービスなのに普通に仮想サーバをたてるより安いという不思議な状況になっています。となると、既存もしくは新規のアプリケーションをクラウドネイティブに作れるところが、どんどん有利になってくることになります。

まとめ



 唐突ですが自分の頭の中の整理用に、クラウドネイティブってそもそも何というのを整理してみました。じゃぁ、実際にどういうアーキテクチャになるのとか、何が出来て何が出来ないのかという話がでてきます。順次整理してみようかなと考えています。

Amazon Web Services パターン別構築・運用ガイド  一番大切な知識と技術が身につく

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