プログラマでありたい

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技術書典20参加レポート:会場+29%は来場者数の追い風、オンライン+72%は毎日の発信が効いた

 2026年4月11日から26日まで開催された技術書典20が、無事に終了しました。前回エントリでは初動2日分の速報を共有しましたが、オンライン会期も含めた全期間の集計が出揃ったので、改めて振り返りをまとめておきます。基本的には次回出展する自分へのメモですが、これから出展される方や同じく出展されている方にとってのヒントにもなれば幸いです。

 なお、前回(技術書典19)の振り返りはこちらにあります。比較で参照する数字はこの記事から引用しています。

blog.takuros.net

技術書典20 全体結果 / 前回比+54%の803冊

 まずは結論から。

項目 技術書典19 技術書典20 増減
冊数
520冊
803冊
+54.4%
オンライン
308冊
530冊(66%)
+72.1%
会場
212冊
273冊(34%)
+28.8%

 コロナ以降の自己最高記録を更新する結果になりました。事前予測(700冊)も上回っています。新刊2冊体制と最終日プッシュという2つの大きな打ち手が噛み合った結果だと感じています。

書籍別販売実績

書籍 オンライン 会場 合計
⑨エンジニアとお金(新刊)
286冊
100冊
386冊
⑧Organizations本(新刊)
145冊
78冊
223冊
⑩よもやま話
54冊
35冊
89冊
⑦S3本
16冊
18冊
34冊
⑥IAM2025
13冊
20冊
33冊
①IAM初代
5冊
6冊
11冊
③データ分析基盤(設計)
4冊
5冊
9冊
④昔話
2冊
4冊
6冊
②アカウントセキュリティ
1冊
4冊
5冊
⑤データ分析基盤(性能)
1冊
3冊
4冊
合計
530冊
273冊
803冊

※その他若干の販売を含むため、各行の合計と合致しない部分があります

 ポイントは以下です。

  • 新刊2冊で全体の76%(609冊)を占めた。1冊だけなら技術書典19以下に終わっていた可能性が高い
  • 『エンジニアとお金』だけで全体の48%。Organizations本と合わせて76%
  • 『エンジニアとお金』(386冊)はOrganizations本(223冊)の1.7倍。個人のお金というテーマがAWS技術書の購買層を超えて広がった
  • 既刊の会場クロスセル比率が高い。IAM2025=61%・S3本=53%が会場購入で、新刊購入のついで買いがしっかり機能している
  • 一方で既刊のオンライン単品は4〜13冊と低調。ここは次回への課題

日別の販売推移 / オンライン・オフラインの動き

 今回いちばん重要だと感じたのが日別の動きです。会期16日間で何が起きていたかを並べます。

日付 オンライン 会場 合計 メモ
4/11(土)
82冊
0冊
82冊
オンライン開始日
4/12(日)
89冊
273冊
362冊
会場日。全体の45%を1日で達成
4/13(月)
41冊
0冊
41冊
会場後の反響購入
4/14(火)
26冊
0冊
26冊
4/15(水)
18冊
0冊
18冊
4/16(木)
17冊
0冊
17冊
4/17(金)
9冊
0冊
9冊
4/18(土)
20冊
0冊
20冊
週末で一時回復
4/19(日)
15冊
0冊
15冊
4/20(月)
5冊
0冊
5冊
谷底
4/21(火)
7冊
0冊
7冊
谷底
4/22(水)
12冊
0冊
12冊
宣伝再開で底打ち
4/23(木)
15冊
0冊
15冊
累計15,000冊投稿が引き金
4/24(金)
8冊
0冊
8冊
4/25(土)
47冊
0冊
47冊
最終日プッシュ開始
4/26(日)
119冊
0冊
119冊
真の最終日。ラストスパート
合計
530冊
273冊
803冊

 会期の三大ピークは「4/12 会場日(362冊)」「4/26 最終日(119冊)」「4/11 開始日(82冊)」の3日で、合計で全体の70%を占めます。当初の予測では4/11がもっと大きく、最終日はもっと小さい想定でしたが、最終日のラストスパートが想像以上に効きました。

 また、4/19〜21の3日間は谷底で、合計27冊。Xの投稿数を絞ったタイミングと完全に重なっており、「平日に発信を切らすと売上が即座に落ちる」ことが今回の数字でハッキリ確認できました。

オンライン売上の動き / 今回の伸びの主役は実はオンラインだった

 日別の表を眺めていて気付くのは、会場日(4/12)以外はすべてオンライン分だということです。改めて前回(技術書典19)とチャネル別に比較すると、オンライン側の伸びが際立っています。

項目 技術書典19 技術書典20 増減
全体
520冊
803冊
+54%
会場
212冊
273冊
+29%
オンライン
308冊
530冊
+72%
オンライン比率
59%
66%
+7pt

 会場+29%は来場者数+29%という追い風がそのまま乗った結果でしたが、オンラインは+72%と全体平均(+54%)を大きく超えています。「ブース効率は横ばい・オンラインは劇的に伸びた」というのが今回の本当の構図です。

 オンライン530冊のうち、新刊2冊(『エンジニアとお金』286冊+Organizations本145冊=431冊)で81%を占めます。つまりオンライン+222冊の伸びの大半は新刊2冊化が直接の要因です。そのうえで、純粋にオンライン側の工夫として効いた要素を分解すると以下です。

1. 『エンジニアとお金』がAWS外のテーマとしてオンラインで広く取られた

 『エンジニアとお金』のオンライン286冊は、Organizations本の145冊の約2倍です。会場(100冊 vs 78冊)よりオンラインでの差が顕著で、『エンジニアとお金』のオンライン比率は74%、Organizations本は65%でした。個人のお金というテーマがAWS技術書の購買層を超えて広がり、それがオンライン側に強く出た形です。

 あわせて目立ったのが、『エンジニアとお金』の電子のみ89冊が他書より極端に多かった点です。少し補足が必要なのですが、技術書典では会期中はオンライン購入でも物理本が送料無料、かつ自分は電子版単体と紙+電子セットを同価格に設定しています。つまり電子のみを選ぶ経済的理由はありません。それでも89人が電子のみを選んだのは、紙の本そのものを持たないと割り切る読み方を意識的に選んだ人が、それだけいたということだと見ています。『エンジニアとお金』はAWS本のように机に置いて何度も引くリファレンスとしてではなく、一読して自分のことを考える材料として読まれている、というのがこの数字の解釈として自然です。

2. 最終日に発信を集中させると押し込める

 4/26は会期最終日で、119冊。会場日の362冊に次ぐ会期2位の数字でした。前日4/25=47冊・前々日4/24=8冊と比べると、最終日に発信を集中させた1日で一桁台から3桁に跳ねていることが分かります。会期終了を告知すれば、それで読者の購入の背中を押せる余地がまだ残っていた、ということでした。

3. 開始日(4/11)の集中宣伝

 4/11の82冊もすべてオンライン分です。オンライン会期16日間の入り口でアクセルを踏めるかどうかが、その後の指名買いも含めて全体の動きに影響します。

4. 会期16日間を意識した発信

 累計実績ポスト・サンプル公開・新刊解説など、オンライン期間中の能動的な発信が前回より増えました。逆に中盤4/19〜21の谷も同じメカニズムの裏返しで、発信を絞った3日間で15〜30冊取りこぼしているのも、すべてオンライン側で起きています。

ここから見えること

 会場販売は枠の商売、オンライン販売は働きの商売、と整理すると分かりやすいです。会場の天井は来場者数というハコの大きさで決まり、ブース側の改善がない限りそこで頭打ちになります。一方でオンラインは、会場に足を運ばない読者にも、来られる読者にも届くチャネルです。発信した分だけ反応が返ってくる、いわば積み上げで伸ばしていける世界で、伸びしろの天井が会場より素直に上に伸びます。今回もそこを取りに行けた部分が、結果として伸びを作りました。逆に言うと、来場者数増という追い風が効かないオンライン側こそが次回以降の主戦場で、平日宣伝の空白を潰す・既刊の外部誘導を整える・最終日プッシュを準備するといった改善は、すべてオンラインの伸びしろに直結します。

プラットフォーム側のトレンドも見ておく

 ちなみに技術書典の運営側のデータも、技術季報 Vol.19 / Vol.20 で公開されています。注目したいのは2つです。

  • 技術書典のオンラインアカウント数は技術書典18時点で7万人を超え、Vol.20でも依然「7万人超・10万人も近い将来」と表現されています。会員数自体は18から20まで大きな変動はなさそうです
  • 一方でファン1人あたりの平均購入冊数は、技術書典15→16→17→18で 4.9→4.8→5.2→6.3冊と直近で急増。平均購入金額も¥3,900→¥4,000→¥4,100→¥5,200と+33%伸びています

 つまり、技術書典オンラインは「会員数を増やすフェーズ」というよりも「会員1人あたりの購買意欲が増えているフェーズ」に入っています。当サークルのオンライン+72%のうち、いくらかはこの全体トレンド(1人あたり購買意欲の増加)に乗ったぶんで、純粋に当サークル固有の上積みはそこから差し引いた残り、と読むのが妥当です。「会員数の追い風」ではなく「読者の購買意欲の追い風」、という違いは次回の戦略にも効いてきます。読者の購買意欲が高まっているフェーズだからこそ、新刊2冊体制や既刊の動線整備の効果が乗りやすい、というのが今回の構造でした。

会場(4/12)の時間帯別 / 過去回との比較

 前回エントリにも掲載した、会場販売の時間帯別比較です。今回は技術書典20の列を加えました。

時間 技術書典7 技術書典14 技術書典15 技術書典17 技術書典18 技術書典19 技術書典20
10:00
12冊
11:00
151冊
43冊
24冊
42冊
62冊
42冊
60冊
12:00
94冊
37冊
23冊
43冊
55冊
44冊
56冊
13:00
82冊
48冊
30冊
37冊
48冊
51冊
42冊
14:00
43冊
25冊
49冊
28冊
47冊
40冊
51冊
15:00
45冊
22冊
26冊
28冊
24冊
19冊
36冊
16:00
36冊
11冊
4冊
17冊
19冊
16冊
16冊
合計
451冊
186冊
156冊
195冊
264冊
212冊
273冊
来場者数
9,700人
2,100人
2,200人
2,600人
2,800人
2,400人
3,100人

※集計漏れ等もあり、数字が一致しないところがあります(合計値が正しい)

 会場販売273冊は、コロナ以降の技術書典では過去最高です。特徴的だったのは午後の14時台に51冊と山が立った点で、過去回ではこの時間帯に20〜49冊だったので、今回は午後の動きが大きかったといえます。新刊2冊体制で、お昼の波の後にもう一度ピークが立つ構造になりました。

 来場者数も今回は3,100人で、前回(2,400人)から+29%でした。会場販売も212→273で+29%とほぼ同率で増えており、来場者あたりの販売効率(212/2,400=8.83%、273/3,100=8.81%)はほぼ同じです。今回のオフライン売上の伸びは、ブースの効率改善よりも技術書典自体の盛り返しに相当依存しているということになります。逆に言うと、ブース単体としては来場者数×一定の通過購入率の上限に張り付いている状態で、ここを次に押し上げる打ち手(例: ポスタースタンドでの認知強化、価格表の事前印刷でピーク捌き効率向上)は次回の伸びしろとしてまだ残っています。

X(Twitter)発信と売上の相関

 今回はじめて投稿数と売上を日次で照合してみたところ、かなり強い相関が出ました。

日付 投稿 インプ URLクリック RT 売上(冊)
4/11
40
20,208
173
19
82
4/12
34
18,826
82
14
362
4/13
27
16,227
136
15
41
4/14
15
9,767
103
8
26
4/15
21
13,580
94
12
18
4/16
21
12,510
98
15
17
4/17
20
9,969
32
6
9
4/18
32
15,999
81
7
20
4/19
10
4,027
17
1
15
4/20
11
6,663
42
2
5
4/21
4
3,592
28
1
7
4/22
17
10,616
34
4
12
4/23
19
9,045
102
8
15
4/24
15
6,114
56
9
8
4/25
35
13,893
149
9
47
4/26
62
22,079
168
32
119

 わかりやすかったのは、中盤4/19〜21の「投稿4〜11件しかなく、売上5〜15冊」と、最終日4/26の「62投稿で売上119冊」のコントラストです。「ツイートを切らさない」が売上の前提条件であることを、はっきり数字で確認できました。新刊告知ポストも単発ではインプ約32,800・URLクリック471・RT65と桁違いの数字が出ており、新刊告知が最強の集客装置でもあります。

毎日の運用フローと、生成AIによる省力化

 会期中は、夜にまとめて以下のルーティンを回していました。

  • 前日までの売上データを取得し、書籍別・チャネル別に集計
  • 当日までに発信したポストのインプレッション・URLクリックを確認
  • 翌日のツイート3〜5本を下書き・予約セット

 オンライン会期は16日間あり、これを毎日完全に手動で回すのはしんどい作業です。今回は、これらのかなりの部分を生成AIに任せて省力化しました。具体的には、メールやマイページから取った売上データの整形と集計、過去ポストのパフォーマンス傾向の整理、それらを踏まえた翌日のテーマ提案や下書き生成までを生成AIで整理する、という使い方です。これがあったからこそ、平日も含めて発信を続けられた部分は確かにあります。

 ただし、ツイート本文の最終調整は必ず自分の手で行いました。生成AIが出した下書きの文体や言い回しを自分のものに整え直したうえで投稿する、というラインは引いていました。これは次回も変えないつもりです。

 なお、4/19〜21の谷は、ちょうど集計・下書き生成のフロー自体を自分の手元で一度止めてしまった時期と重なっています。下書きまでは仕組み化、最後の仕上げは手作業というバランスが崩れた瞬間に売上が落ちる、という結果がはっきり出た形でした。

効いた施策 Top 5

1. 新刊2冊体制を続けたこと

 新刊1冊だけだった場合のシミュレーションでは、Organizations本のみなら約280冊(技術書典19以下)、『エンジニアとお金』のみなら約400冊(技術書典19並み)。2冊出したからこそ803冊に到達できたという計算です。コストはかかりますが、これがいちばん再現性のあるレバーです。

2. 最終日プッシュ

 4/26は朝・昼・夕・夜・終了直前と段階的にツイートを投下し、62投稿で119冊。投稿数が直接売上に紐づきました。次回はこの最終日効果を最初から織り込みます。

 ここで補足しておきたいのは、62投稿の中身が必ずしも自分の書籍の紹介一色ではなかった、という点です。実際には今回購入した他サークルの本の感想や紹介、他の出展者のツイートの引用・リポストが半分くらいを占めていました。最終日のタイムラインは「終わりが近い」という空気で同人誌コミュニティ全体が盛り上がる時間帯で、そこにコミュニティ参加者として自然に乗ったのが結果として効いた印象です。出展者同士の相互送客も生まれますし、自分の宣伝ばかり連投するアカウントよりも届く範囲が広がります。「最終日は自分の宣伝で押す」と考えると逆に届かない可能性があり、他出展者・購入本の紹介を厚く混ぜるほうが結果的に自分にも返ってくる、というのが今回の感触でした。

3. 会場でのクロスセル

 会場273冊のうち、新刊+既刊の組み合わせ買いがかなり多かった印象です。ポップでシリーズ全体を見せ、既刊それぞれの役割の違いを口頭で説明したのが効きました。ただし後述するように、会場販売の伸び(+29%)は来場者数の伸び(+29%)と完全に同率で、来場者あたりの購入率は技術書典19から横ばい(約8.8%)。クロスセルが効いているのは事実ですが、技術書典19から20でブース効率が上がったわけではない、という冷静な認識も必要です。

4. 開始日の集中宣伝

 4/11はオンライン開始のタイミング。40投稿でインプ約20,000、初日82冊。先頭でアクセルを踏むことで、その後の指名買いに繋がりました。

5. 『エンジニアとお金』というテーマの裾野

 『エンジニアとお金』386冊は全体の48%、Organizations本(223冊)の1.7倍。AWS技術書の購買層を超えて広く取られたのが今回いちばんの新発見です。電子のみ89冊が他書より極端に多かった点も特徴的で、送料無料・同価格でも紙+電子セットを選ばなかった層が一定数いたことを意味します。AWS本のように机に置いて何度も引くリファレンスとは違う読まれ方をしている、と解釈しています。AWS本では届かない層と読まれ方に届くテーマを1冊持っておく意義は大きい、と確認できました。

反省と次回(技術書典21)への持ち越し課題

中盤の宣伝空白(4/19〜21)

 投稿を絞った3日間で、明確に売上が落ちました。推定で10〜15冊の機会損失です。次回は平日も最低3投稿/日を機械的に維持します。具体的には前週末にまとめて予約投稿を仕込み、忙しい日でも空白が出ないようにします。

既刊オンライン販売の弱さ

 会場では既刊もしっかり動きますが、オンラインでは既刊単品が4〜13冊と低調でした。技術書典オンラインのプラットフォーム制約(バンドル不可・お勧め3枠のみ・商品間リンク弱め)に依存せず、外部から各既刊ページに直接送客する設計に切り替える必要があります。具体的な対策として:

  • 各商品の説明欄を「誰のための本か」「シリーズマップ」「あわせて読みたい関連既刊」のランディングページ化
  • お勧め3枠を「既刊→既刊」連鎖型に再設計(新刊同士で互いを推す必要は薄いと判明)
  • 新刊の巻末に既刊一覧ページ(QRコード+1行紹介)を追加
  • サークル案内ハブページを1枚作って、ピン留め・プロフィール・ブログ末尾・新刊中の全導線をそこに集約

最終日プッシュの予習不足

 4/26は119冊でしたが、もっと早く全力モードに入っていたら150冊いけた可能性があります。次回は最終日プッシュ用のストック投稿を10本準備しておきます。当日その場で書こうとすると質が落ちるので、各書の見どころ・感想ピックアップ・残り時間カウントダウンを事前にテンプレ化しておきます。

データ取得タイミング

 最終日(4/26)当日朝にデータを取ると、最終日の販売分(119冊)を取り逃がします。集計は終了翌々日(月曜)以降に取得するのを徹底します。マイページのCSVエクスポートを正、メールmboxはバックアップという位置付けに。

会場の通過購入率の頭打ち

 今回新しく見えた課題が、会場ブースの通過購入率です。冒頭の比較表で見た通り、来場者数 +29%・会場販売 +29% で、来場者あたり購入率は約8.8%で技術書典19から横ばい。会場販売の伸びはブース改善ではなく技術書典の盛り返し由来でした。来場者数が頭打ちになった瞬間に会場売上も頭打ちになる構造なので、ここを次の伸びしろとして攻める必要があります。具体策:

  • ポスタースタンドで縦の空間活用。離れた通路からも認知される導線を作る
  • 価格表・組合せ案内を事前印刷して机上に置く。即決を促す補助物
  • ピーク時間帯(11時の60冊)のバックアップ要員確保。会計の詰まりが機会損失に直結する
  • 新刊以外の書籍にも個別ポップ(誰のため・3行サマリ)を用意し、視線が新刊だけに集中するのを防ぐ

数値目標

 次回(技術書典21)の数値目標は以下です。来場者数の追い風が無い前提(3,100人で横ばい想定)で組んでいます。

指標 技術書典19実績 技術書典20実績 技術書典21目標 前提・根拠
冊数
520
803
900〜1,000
平日宣伝強化+既刊外部誘導+新刊2冊継続
新刊比率
76%
70%超を維持
新刊2冊体制を続ける
既刊オンライン
14冊
40〜70冊
外部ハブ+商品説明欄改善
会場通過購入率
8.83%
8.81%
10%〜
ポスタースタンド・価格表・要員配置
会場販売(来場3,100人想定)
212
273
310〜340
通過購入率の改善ぶん

他の出展者の方へのヒント

 ここまでは自分向けの記録ですが、これから技術書典に出展される方や、同じく試行錯誤されている方に向けて、自分の経験から拾えるところを書いておきます。

新刊は出せるなら絶対に出す

 新刊がない回(自分の場合:技術書典15・17)は合計が半減します。新刊はそれ自体が売れるだけでなく、ブースに人を呼ぶ集客装置としても機能します。半年に1冊ペースが回せれば、既刊の売上も維持されます。

平日も切らさない

 土日に投稿が多いのは自然ですが、平日に空白を作ると翌日以降の売上に直接効いてきます。最低でも1日3投稿、内容は「感想紹介」「書籍ピック」「雑談」くらいに分散させると詰まらないです。今回の自分の数字(4/19〜21の谷)で因果がはっきり見えました。

最終日は本気で

 最終日は思っているより売れます。当日その場でツイートを書こうとすると質が落ちるので、ストック投稿を事前に用意しておくのがおすすめです。朝・昼・夕・夜・終了直前の5回が最低ライン。今回の119冊はその気付きで言えば「もっと早く本気を出せていたら」案件です。

既刊の動線を別途作る

 技術書典オンラインの商品間リンクは弱いので、サイト・ブログ・ピン留めツイート・新刊巻末などにシリーズ全体のハブを置くのが効きます。新刊を入口に既刊まで連れていく動線を、技術書典の機能に頼らず自前で作るイメージです。

数字を残す

 ツイート数、インプレッション、売上を日別に並べて見ると、施策の効果が客観的に見えます。気合で頑張るより、数字で振り返るほうが次に繋がります。今回の自分の振り返りも、すべてここから始まりました。受信メールやマイページのエクスポートをスクリプトで集計するだけでも、見える景色が変わります。

来場者数も合わせて記録する

 今回もう一つ大きな気付きがあって、自分の販売数だけでなく技術書典の公式来場者数も毎回記録しておくと、自分の伸びがブース改善によるものか、イベント自体の伸びによるものかが切り分けられます。今回の自分のケースで言えば、会場販売+29%の中身は実のところ来場者+29%×ほぼ同じ通過購入率で、ブース改善はほとんど寄与していなかった、ということが見えました。来場者あたりの購入率(自分の場合は約8.8%)を毎回追うと、ブース運営の改善が効いているのか錯覚なのかが分かるのでオススメです。

生成AIで省力化しつつ、最後の一文は自分で書く

 毎日の集計やツイート下書きは生成AIにかなり任せられる時代になりました。会期中の運用負荷は確実に下がるので使わない手はないのですが、出てきた下書きをそのまま投稿するのはおすすめしません。データ整理・パフォーマンス分析・下書き生成・テーマ提案までは仕組み化し、読者の目に触れる本文の最終調整は人間が手で整える、というラインを引いておくのが現実的だと考えます。

まとめ / 次回(技術書典21)に向けて

 技術書典20は、新刊2冊・『エンジニアとお金』という新テーマ・最終日プッシュの3つの打ち手が噛み合って、前回比+54%の803冊という結果になりました。チャネル別に見ると、会場+29%は来場者数+29%の追い風がそのまま乗った結果で、ブース効率自体は横ばい。一方でオンラインは+72%と全体平均を大きく超えており、今回の伸びの主役はむしろオンラインでした。会場は枠の商売、オンラインは働きの商売、という構図が今回はっきり見えた回でもあります。一方で、中盤の宣伝空白・既刊オンライン販売の弱さ・会場ブースの通過購入率の頭打ち、という3つの改善余地も同時に浮かびました。来場者数の伸びに依存しないブース設計と、発信の密度に応答するオンライン側の打ち手の作り込みが、次の伸びしろです。

 次回は900〜1,000冊を目標に、『エンジニアとお金』に続く2冊目の検討、既刊用の外部ハブ整備、ブース回りの認知強化(ポスタースタンド・価格表・要員配置)を中心に動こうと思っています。「3日に1度しか発信しない」「既刊はオンラインの機能任せ」「会場は来場者数任せ」という、今回ボトルネックになった3点を構造から潰すのが次の宿題です。

技術書典が終わったあとの買い方について

 最後に、今回の本を「あとから読みたい」と思ってくださった方に向けて、販売チャネルの整理だけ書いておきます。会期が終わったあとは、BOOTHとKindleの2つで継続販売しています。この2つは、売っている本ではなく売っている相手が違うチャネルだと思っています。

BOOTH(紙+PDFセット/PDF単体)

 BOOTHは、技術書典の延長で自分が在庫と価格をそのまま持ち続けている場所です。技術書典で買えた紙+PDFセットや、PDF単体版がそのまま並んでいて、シリーズ買いや全巻セットもこちらに置いています。今回の記事で何度か触れた「IAM初代+IAM2025の2冊セット」「データ分析基盤の設計+性能の2冊セット」のような読み方をしたい方には、BOOTHの方が動線として素直です。手数料が低いぶん、こちらで買っていただけると著者側にもしっかり届きます。

佐々木拓郎のオンライン本屋

Kindle(電子のみ)

 Kindleは、技術書典やBOOTHを普段使わない読者に届けるための場所です。AWSコミュニティの外、たとえば業務でAWSを触り始めた方や、書店アプリ経由で技術書を探している方の手に渡るのは、ほぼKindle経由です。今回の『エンジニアとお金』のような、AWSの外側の読者層にも関わるテーマは特に、Kindle化を進めていく予定です。手元で検索しながら読みたい方や、Kindle Unlimitedを使っている方にはこちらをおすすめします。

AWSの薄い本

まとめ — 次回もよろしくお願いします

 今回手にとっていただいた皆さま、本当にありがとうございました。会期が終わったあとも、BOOTHとKindleで本は残り続けます。気になっていた巻があれば、ぜひそちらからお迎えください。
 次回の技術書典21でもまたお会いできるよう、引き続き書いていきます。