プログラマでありたい

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獺祭の適正価格に関する雑感

 もの凄く炎上しそうなので躊躇してますが、言いたいことが沢山あるのでつらつらと書いてみます。

日本酒と酒蔵を巡る現状


 まず予備知識として、日本酒を取り巻く状況を確認します。日本酒の国内出荷量のピークは1970年ごろで170万klで、現在はその1/3くらいの60万klまで減っている。造り手である酒蔵も減っていて、3,000以上あった酒蔵も今では1,400件程度になっています。この数字だけ見ていると、見事に市場は縮小しています。一方で興味深い数字もあります。特定名称酒とされる吟醸酒、純米酒の出荷量は堅調です。一番高い純米吟醸酒については、逆に増えています。
 ここの数字を見ていると色々と面白い物が見えてくるのですが、年間5,000kl以上の大規模生産者は15社あって、その15社が日本酒出荷の半分を担っています。そしてその生産の大半が、特定名称酒以外(≒安い酒)です。逆に規模が小さい生産者ほど特定名称酒の出荷割合が高いです。
 つまりは、小さい所ほど高級化路線の模索をしているのが垣間見れます。と言うより、生産量が少ないので付加価値高い物を売っていくしか生きていけないのでしょう。

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出典 
清酒製造業の概況(平成28年度調査分)日本酒をめぐる状況 - 農林水産省
清酒製造業者数の推移

獺祭の広告


広告の目的については、獺祭の旭酒造の社長インタビューの記事があるので、そちらをご参照ください。目的としては希望小売価格と取扱店を知らしめるという事のようです。キャッチーなコピーはどうかと思いますが、かなりの反響だったのでマーケティングとして成功なのではないでしょうか。

日本酒「獺祭」の蔵元、旭酒造が「高く買わないでください」と呼びかける新聞広告を掲載。広告に込めた思いを聞いた。

適正価格とは?


togetter.com

 この件で個人的にずっと引っかかってるのが、適正価格って何という話です。私は学生時代は経済学部だったので基本的には需要と供給が価格を決定するというシンプルな考え方が根底にあります。また、社会に出てから様々な商品の販売戦略、マーケティングを横で見てきて、価格を決めるという事の難しさも知っているつもりです。一方で個人的な体験として、買い手がいる価格に収斂していくという事も感じています。
 10年以上前にアメリカのグループ会社で働いていました。その時は結構暇だったので、eBayで買って日本のヤフオクで売るというせどり的な事を興味本位で幾つかの商品でやってました。その結果、商品の知名度(市場規模)で2つの傾向があることが解りました。知名度が高いものは、仕入れの価格帯もほぼ同じで常に商品がある代わりに、一定の手数料分をつけた値段でしか売れない。Fire Kingのマグカップやらポラロイドカメラがこのパターンです。Fire Kingはだいたい2,000円くらいで買ってヤフオクで4,000円くらいで売れるという感じです。倍で売れても送料やら手数料で利益は殆ど出ないです。買ってる方も、雑貨屋さんが仕入れとして買ってるケースが多く、店頭では8,000円くらいで売られていたようです。話を聞いてみると、手間を考えると別に儲かるものではないが、定期的に入荷する事でそれ目当てのお客さんが来るので入れているという感じのようでした。ちなみに知名度が低いものは必要とした人が探して買うと言うものが多く値段とはあまり関係なく売れました。
 話をFire Kingのマグカップに戻すと、元々は数百円だったものがアンティーク化されて一万円近い値段になった訳です。また、それぞれの工程で倍々の値段になっても売れます。結局、買う人がその値段に納得して買っているのであれば、何でも良いのじゃないと考えています。モラルの問題では無いと思います。もちろんお酒の場合は保存状態で品質劣化して造り手としては悩ましい問題なのは解ります。また、ニンテンドースイッチのように転売屋が買い占めるというのも望ましくないでしょう。ただ高くても良いから買いたいという人に、知恵と手間かけて商売している人がいても良いのではと思ってます。

ところ変われば値段も変わる



 少し話変わりますが、レストランでボトルのワインを注文した場合、小売店の店頭価格に対してどれくらいの価格差があるかご存知ですか?どのような店舗形態かによっても大きく変わりますが、一般的には3〜5倍という価格設定が多いです。つまり、レストランで3,000〜5,000円で売っているワインは、酒屋で1,000円のワインです。メニューで5,000円という値段をみるとかなりの高級ワインに感じるかもしれませんが、ごくごく一般的なワインです。で、この値段が高いと感じるか、安いと感じるか。単純にワインだけで考えると高く感じるでしょうが、店側の言い分としては買い付けや保管料、サーブするサービス料、そもそもの店舗の運営費を載せた金額になっています。また、料理とあわせる付加価値という面もあります。
 あるいは、アメリカの寿司屋では、十四代とか一本あたり恐らく2〜3万円の価格設定で出されていました。高いところだと、10万円近いところもあったんじゃないかなと思います。それでも、日本酒好きなアメリカ人はこれが旨いんだよといって喜んで飲んでいました。逆に、現地のスーパーで1,000円くらいで売ってたワインが、日本の小売店だと2,000〜3,000円くらいというのもザラにあります。ところ変われば値段も変わるのです。獺祭を高値で売っているお店も、売れる値段で売っているのです。

売り手は、売ってしまった商品に対しては願望を伝えることしか出来ない。



 そもそも売ってしまった後には、売り手ができることって殆どないのですよね。今回の広告も、それがよく解っているので、お願いという形になっているんでしょう。私も、何冊か本書いていて或いはアプリとか出したことがあって、受けてがどう受け取るかで非常にやるせない思いをすることもありあmす。

 例えば、Amazonのレビューで★1のやつ。

内容はOK、Kindle版のデータ形式はクソ

 それは著者の私でもどうしようも出来ないのだよと強く主張したいのですが、買い手としては総体としてのサービスなので上記のようなサービスになります。これに対して怒ってもどうしようもないです。或いは、想定の読者層と違う人がよんで、難しすぎるとか初歩的すぎるとか。言いたいことも色々でてきますが、甘んじて受け止めるしかないのです。

そもそも日本酒って安すぎない



 どうでもよい愚痴をつらつら書いていましたが、もうひとつ。ワインを普段飲んでいる身としては、日本酒って相対的に安いなと感じています。もちろん輸入しているものと、生産国で買っているという違いがあるものの、同じ価格帯で比べると日本酒の方がクオリティ高いものが多いように感じます。また、上限もせいぜい数万円くらいです。もっと10万、20万するような日本酒が出ても良いのではないでしょうか?そういう意味で、ブランド戦略が非常に上手くいっている獺祭については、もう少し強気な価格設定したほうが良いんじゃないのと思っておりました。
 Twitterで教えてもらったのですが、元サッカー選手の中田さんが海外で高級路線の日本酒を出しているようです。このような取り組み、国内国外問わずにもっとあっても良いのではないかなと思います。

forbesjapan.com

どんな日本酒が好きなの?



 最近はそれほど飲んでいないのですが、私は日本酒も結構好きです。大吟醸のようなスッキリしたものではなく、純米のような雑味が多いものが好きですね。冬はぬる燗くらいでちょっと温めたくらいが良いですね。銘柄は特定のこれというのは無いですが、七本槍とか而今とか好きでしたね。(而今も今は、プレミア酒になっているとか)

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まとめ



 需給だけで考える奴は馬鹿だろという反応に対して、何考えているかを書き出してみた次第でございます。しかし、別に当事者ではないので、これ以上特に思うところはありません。一方で、酒蔵やっていた親類が5年ほど前に廃業していて、もったいないなぁという思いはずっとあります。