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"人工知能は人間を超えるか"のKindleセール99円が面白い

 最近注目しているのが、Kindle角川セールで行われている"人工知能は人間を超えるか"の99円セール。この本は、紙の本であれば1,512円ですが、Kindleのセールで何と99円。さらに19%ポイント還元です。95%以上OFFと、類を見ないセール内容となっています。

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)

このセールが面白いと思う理由



 私がこのセールを面白いと思う理由は、この本が本来買うであろう顧客層を突き抜けて、広範囲に売れていると推測しているからです。本というのは、実は元々想定する読者層の中で如何に買われるかが勝負になります。例えば、SF小説というカテゴリーを買う人は一定数いて、逆に一定数以上の人は買いません。顕著な例だと、医学書で特定の症例を題材にした場合、恐らく読者層はせいぜい数百人くらいで、ヘタしたら著者は読者のことを殆ど知っているのではないかという場合もありそうです。コンピューター系の技術書も、カテゴリーが細分化されていて初版の3,000冊売れればやれやれということも多いようです。
 この人工知能というテーマも、本来であればそれほど大きな購買層を持っているとは思えません。もちろん、ビッグデータや機械学習といった言葉が一般紙にも載るようになったので、興味を持たれる下地はあると思います。しかし、Kindleの有料ストアランキングの1位に君臨し続けるパワーはなかったはずです。それが上手な価格戦略のおかげで長期にわたって1位になっています。また紙の本も3桁順位の前半をキープし続けるなど、大健闘です。
※Amazonの紙の本のランクで、3桁順位は飛ぶ鳥を落とす勢いです。

このセールは、成功なのか?



 つまりこのセールは、大成功なのではと思います。この本は2015年3月に発売され、かなりのヒットを続けていました。レビュー数からみても解るとおり、かなりの好評価を得ています。この時点で、この本のポテンシャルに気がついた/もしくは一気にベストセラーを目指そうと、今回の目玉企画につながったのでしょう。実際、このセールで買っている人は、本来であれば買わなかった人が9割くらいなのではと思います。(私もその一人です。)Kindle本が売れているとなると、引きつられて紙の本が売れます。まだまだ大多数の人が、本は紙で読みたいという人がいるからです。
 出版社としては、Kindle本は利益が出ないor損失だけど、もともと売れない層に売っているから敢えて目をつぶれます。その分、紙の本が売れてくれれば万々歳です。見事にその戦略があたっているのではないでしょうか?

Kindleのセールの場合、印税はどうなるのか?



 ちなみにKindleのセールの場合、印税はどうなるのでしょうか?セール以外の話をすると出版社によって違いますが、紙の本の印税は8〜10%くらいでしょう。また、Kindle版は、その倍の16〜20%くらいというのが多いようです。例えば、1500円の本で10%の印税であれば、1冊売れれば150円です。Kindle版は紙の本より安く設定されることが多いですが、例え半額でも同程度の印税が貰えるように設定されることが多いようです。
 さてセールの場合です。実はセールで安売りしていても、著者に入る印税は元々の価格をベースにしたものが多いようです。つまりセールと関係なく正規の印税が手に入るということです。この辺りは、別途詳しく解説しようと思います。

本のマーケティングに思う所



 今まで出版社は、マーケティングという意味でのマーケティングは殆どしていませんでした。また、再販価格維持制度があるので、(ハードカバー、文庫本という意味以外)価格戦略というのも殆ど取っていません。Kindelの登場により、この辺りが一気に変わるのではと思えてきました。技術書というニッチな市場の著者としては、印税よりかは如何に多くの人に届くのかという方が興味があります。その辺り考えると、Kindle直販など色々試してみたくなります。その考えのキッカケになるセールでした。

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)

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