プログラマでありたい

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ビッグデータの衝撃の衝撃。或いはSIerの立ち位置について


 最近、主にビジネス的な観点から、何冊かビッグデータ本を読んでいます。事例紹介だけでなく、ビジネス観点での考察も含めてよくまとまっているのが、最近発売された「ビッグデータの衝撃――巨大なデータが戦略を決める」です。
 この著者の本は、以前に「クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった」を読んで多いに考えさせられました。というのも、クラウドという破壊的技術が出てきた中で、SIerはどう立ち回っていけばよいのか。これまでは、データセンター等のインフラを独占出来た大手SIerは黙っていてもお客さんが来る商売でした。しかし、クラウドの出現でインフラがコモディティ化してきています。そうなった時に、どこで勝負するのか?インフラの上に乗っかるサービスというのが一つの解でしょう。


 そういった文脈で、考えると最近のSIerのビッグデータの取り組みも納得出来ると思います。Googleニュースでビッグデータで検索すると大手SIerが専門部署を作るという動きがいくつも出てきます。


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NRIがビッグデータ活用の企業支援活動を開始 - ITmedia エンタープライズ
ニュース - トランスコスモス、60人のビッグデータ専門部隊立ち上げ:ITpro
NEC、ビッグデータ活用のコンサルティングサービスを開始  :日本経済新聞
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 機動的に専用の部署を作るのは、素晴らしいなぁと思います。一方で社内から人を集めて専門性は大丈夫なのかという懸念があります。Googleのチーフ・エコノミストであるHal Varian氏が、次のようなコメントを残しています。「今後10年間で最もセクシーな仕事は、統計学者」Google等の第一線の企業は、ビッグデータが必要となると専門家を集めてチームを組みます。(元々Googleは統計学の会社ですが)一方で日本のSIerは、社内での配置転換です。
 私も自然言語処理に魅せられて、数年来Hadoopやデータ分析についてフォローしてきました。ライブラリやフレームワーク・プラットフォームが充実してきているので、素人でもそれなりの解析が手軽に出来るようになってきています。一方で、新たな解析手法やアルゴリズムを考えられるかというと、間違いなく無理です。それと同様にSIerの中のビッグデータの専門部署が、どこまで専門性を突き詰められるかは疑問が残ります。
 恐らく解析するためのプラットフォームを提供し、分析自体は依頼主であるメーカーの中の統計学者が行うとかそういう形になるのではないのかなと思います。そうなると、単にインフラを提供するという意味では以前と変わらないのではという疑問が出てきます。確かにHadoopを何十台で運用するには、かなりのノウハウが必要です。一方で、Elastic MapReduceといったHadoopのSaaS等も出ているので、間違いなく運用の敷居は低くなってきています。やはりもう一歩踏み込んだサービスが必要なのではと思います。そういった中で、社内で人を融通する今の雇用体系で大丈夫なのかという懸念はあります。


 しかしながら、色々課題はありますが、私はサービス化を目指すSIerの動きに期待しています。業界自体が、今のままでは生き残れないという共通認識が出てきているように思えます。将来的には、フルスタックでサービスを提供する大手のSIer数社と、それぞれの専門性に特化した中小のSIer、そしてユーザ企業に近い位置にいる小回りの効く小規模SIer。こんなカタチになるのではないかなぁと思います。クラウドに続くビッグデータの動き。注目していこうと思います。そして後数十年働けるように、自分の立ち位置を考えていかねばなぁと思います。
 気がついたら、本の内容に全く触れていなかったですが、色々考える切っ掛けになって有意義な一冊でしたw


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