プログラマでありたい

おっさんになっても、プログラマでありつづけたい

人月は善でも悪でもないけど、そのうちそんな事言っている余裕もなくなる

 両者とも納得出来るようで、モヤモヤっとした違和感があるので、ちょっと考えてみました。
最初に私の立場を説明すると、まさしくSIerで人月で見積もって提案しているような人間です。一方、個人的な趣味でiPhoneアプリを作って何本か出しています。


人月は悪どころか、ものすごい善かもしれない - 山本大@クロノスの日記
人月商売が悪だと思っている、イノセントなあなたへ - GoTheDistance


 まず、違和感の原因。それは、iPhoneアプリとSI開発を比較してることに尽きます。iPhoneアプリは、サービス開発後に量産されている商品です。極論すればコンビニで売っているガムやチョコレートと同じです。数百・数千のサプライヤーがいて、数百・数千万のお客さんがいる熾烈な競争が行われている世界です。それに対して、SI開発は基本的にはそのお客さん一人だけに売るためのものです。サプライヤーは多くて二桁でしょう。商売の土壌が違うところから、問題提起されているところでズレが生じているような気がします。市場の競争が全うに行われている分野を見て俺らの業界は人月で守るのが善だよねと言っていても、黒船が来た段階で焼け野原です。
 一方で最近の様子を見ていると、旧態然と人月商売でやっていける余地は少ないんじゃないかと思えてなりません。まず、クラウドに代表されるインフラのサービス化により、データベースなどの設備を持たないで済むようになってきた点。これが一番大きいです。誰でも、競争に参加出来るようになって、プレイヤーが増えています。という事で、価格競争が激しくなっています。次にSaaSに代表されるサービス利用型の提供形態が一般化していること。これは今までASPだSOAだと名前を変えつつ何度も出て生きていましたが、今度こそ本当に普及しつつあると思います。インフラを自前で用意する必要がない分、SaaSの参入障壁が下がって良いサービスが出てきていますから。後はクラウドを活用する技術の発展ですか。
 という事で人月が善だ悪だと議論しても仕方がない世界が待っているのではないでしょうか?


 じゃぁ、人月がなくなるとか。もしくはSIerは一つ残らず滅びてしまうのか?これも違うような気がします。個人的な予想では、業界トップクラスの大手SIerと、中小零細企業を相手にする小さなSIerの二極分化するんではないでしょうか?間の中小のSIerが吸収・合併等で再編もしくは脱落するんじゃないでしょうか。後は専業のサービスを提供する小回りのきく会社が増えると。
 大手SIerが生き残る理由としては、ソニックガーデンの倉貫さんが言うとおりSIerが保険屋としての機能を果たしているからです。つまり一定の金額でリスクを受け取ってくれる役割です。SIer側は確率分布で考えればよいので、多くの案件をこなせば全体でのリスクは小さくなります。そういう理由で規模がモノをいう世界になります。このリスクプレミアムを貰う理由なんですが、正直なところ何でもよいのです。今現在はたまたま人月というものをベースで提示しているだけです。これだと両者ともなんとなく納得する。それだけの話しなんじゃないかなと思います。(そのリスクが読めないから苦労するんですが)
 個人的な結論としては、「人月は善でも悪でもないけど、そのうちそんな事言っている余裕もなくなる。」以上です。