プログラマでありたい

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クラウドの衝撃、或はSIerの悲哀

クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった


 最近話題のクラウド本をようやく読みました。Amazonのレビューにある通り、情報が整理されていて現状認識に最適な一冊かと思います。
 そんなことより私が気になっていたのは、日本の大手のSIerがクラウドをどう捉えているかです。その一旦が垣間見られるのがP154からのミッション・クリティカル/非ミッション・クリティカル分析だと思います。著者は、業務を4つに分けて適用範囲を次のように予想しています。

 コア・ミッションクリティカル     :自社開発
 コンテクスト・ミッションクリティカル :SaaS
 コア・非ミッションクリティカル    :PaaS、HaaS
 コンテクスト・非ミッションクリティカル:SaaS

 自社の最も重要な領域に全てのリソースを注げという考え方には納得がいきます。ただしそれを突き詰めると、やっぱりSIerっていらないんじゃないのという結論に思えてなりません。ほとんどのSIerの収益源は、開発というより運用の方でしょう。では何故、運用をSIerに任せるかというと、企業が自社でサーバを運用するノウハウが無かったから、もしくは、費用対効果で割に合わなかったからだと思います。これがホストの時代からPCサーバの時代になって、さらにクラウドの時代になるとますます敷居が下がってくると思います。たぶんSIerは信頼性だ何だといいますが、解決されるのも時間の問題でしょうね。可用性を高めるには、1台の信頼性を高めるより冗長化構成にするというのが鉄則です。将来的には、数十〜数百万台からのコンピュータからなるAmazon EC2やGoogle App Engineに敵わなくなるでしょう。Amazon EC2という一つの仕組みに頼るのが危険というのであれば、Amazon EC2とGoogle App Engineの二つに同様の仕組みを作ればよいでしょう。
 また、何故日本にこんなに沢山のSIerがあるかというと、企業が自社でシステムを作らないからです。コア・ミッションクリティカルの部分もSIerに丸投げしているという現状があります。この原因は、昔はシステム部門が傍流で業務の中核部門ではなかったからではないでしょうか?しかしこれから出てくる会社というのは、システムのコアの部分は自社で開発するようになるんではないでしょうか?Livedoorしかり楽天しかり。自社のコアコンピタンスを他社に任せるようなお人好しはなくなってくると思います。


 と言うことを考えていくと、SIerは徐々に歴史の彼方に消えて行く存在なんではないかなと思います。SIの企業で勤めている身としては、考えさせられる一冊でした。


クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった
野村総合研究所 城田 真琴
東洋経済新報社
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